2010.09.23

サルでもわかってほしいカメラ原理講座第4回。
今回は、写真を出力するうえで欠かせない撮像素子のお話です。

サルでもわかって欲しいカメラ原理講座 目次

撮像素子とは、一般的にはフィルムとかCCD、CMOSなど写真の像を記録するための素子です。デジタルカメラでは半導体素子であるCCDやCMOSになりますが、CCD・CMOSの原理・利点などは次の機会に。今回は撮像素子の大まかな仕組みをお話します。

多層の感色層をもつカラーフィルム

撮像素子の言及だけでなく、カメラ一般のお話をする上で欠かせないのがフィルム。その原理は意外と簡単です。

まずは簡単に白黒フィルムのお話を。
フィルムの中には、光があたることによって構造が変化する有機分子が入っています。光があたった場所は有機分子が化学反応を起こし、光が当たっていない分子と違う構造に変化します。



この「感光」されたフィルムを化学薬品を用いて現像処理をすることで、像が浮き出る仕組みです。現像処理は、どちらかの分子を除去し、一方の分子を固定させる作業です。ネガフィルムとは、光が当たった「感光された」分子が固定され、光が当たっていない分子は除去される構造・現像処理を行うことができるものです。ポジフィルムはその逆で、光があたっていない分子が固定されます。



ですので、ネガフィルムでは、光があたった分子は黒く固定されるため、現実の像とは白黒反転された像が現像後に現れます。フィルムのことを銀塩とも言うことがあります。それは、使用している有機分子として、ハロゲン化銀の化合物(化学用語で銀の塩)を使っているため、そう呼ばれています。このハロゲン化銀は白黒フィルムで利用されていて、カラーフィルムでは違う有機分子が使われています。
それではカラーフィルムの構造はどのような形になっているのでしょうか。



カラーフィルムは色によって構造が変わる分子を層状に積み重ねて構成されています。フジフィルムの最新カラーネガフィルムでは、青、赤、緑、シアンに感光する分子を4層重ねています。各層で、各色ごとに白黒フィルムと似た化学反応を起こすことによって感光されます。現像も白黒フィルムと同様にどちらか一方の分子を除去・無色化するプロセスです。したがって、現像されたカラーフィルムは、各色を重ね合わせてフルカラーを再現できるわけです。
一般的に、フィルムでは透過光によって印画紙に焼きつけ(印刷)するので、透過光で全色を再現できるRGB(赤緑青)の光の三原色に対応する感色層を積層させています。

フィルムの解像度は、有機分子の塊「粒(グレイン)」の大きさで決まります。



高解像フィルムでは、このグレインの大きさは平均6μm程度の大きさで、35mmフィルムサイズでデジタル的に換算すると、5800×3900〜2200万画素程度に相当します。が、このグレインは、整然と並んでいるわけではありません。グレインの密度が濃い場所と薄い場所があったり、グレインそのものの粒サイズが大小様々あります。また、感光プロセスでも反応しないグレインがあったり、現像プロセスで取り除けなかいグレインが残る場合があります。こういった不均一性から、35mmフィルムの解像度は実効的には1000万画素程度といわれています。

デジタル撮像素子の原理

デジタルカメラで使われているCCDやCMOSは、簡単にいうと光検出器を多数並べたものです。まずは光検出器の原理を簡単にお話します。



光検出器とは、シリコンの半導体でできた光ダイオード(光整流器)です。半導体に電流を流す際、電子が動くn型半導体と正孔(電子が抜けた穴)が動くp型半導体、その両方が動くことのできる(逆に言うと両方ともいない)i型半導体を接合した、pin型構造をとるのが一般的です。光検出器は、光を電気に変える素子ですが、その原理は以下の通りです。
光が半導体にあたることで、半導体中に電子と正孔の対が生成されます。その電子(マイナスの電荷)と正孔(プラスの電荷)が移動することで、電流が発生します。光の量によって、電子と正孔の生成量が変わりますので、光のあたる強さによって電流の量が変化します。それによって光の強度を検出することが可能になります。
その光検出器を多数並べたものがデジタル撮像素子です。CCDやCMOSというのは、その製造方法と電流制御などが違う方式となっているだけで、光検出の原理は一緒です。
この原理から、デジタル撮像素子はモノクロポジフィルムに類似しているとも言えます。いわゆる画素数とは、この光検出器の数を表しています。
それでは、色を検出してカラーイメージを出すにはどうすればよいのでしょうか。そのために一般的に使われているのが、カラーフィルタとベイヤー配列方式です。

ベイヤー配列

デジタル撮像素子は光の強度しか検出できませんので、色を検出するには、カラーフィルタを各光検出器の前に並べればいいということになります。



カラーフィルタとは、上図のとおり、特定の色域のみを透過する光フィルターです。赤色を検出したいなら、赤色のフィルタを光検出器の前におけば、赤色の強度を検出することができるようになります。光の三原色である青・緑も同様です。ですので、色フィルタを並べてあげれば、擬似的に色と像を検出することができるようになるわけです。



この色フィルタの並べ方をベイヤー配列といいます。緑2に対し、赤1青1の割合で配置します。つまり、緑2赤1青1で1対と考えます。これは、緑に敏感である人間の視感度を模倣して解像感を高める配列となっています。人間にとって見た目が自然になるようにし、かつ、解像感を高めるには、視感度の強い緑を多数配置して緑の量を多くする必要があるのです。
このカラーフィルタがあるおかげで色検出ができるわけですが、逆に考えると、ある画素では緑だけ、ある画素では青だけしか検出できないということです。十分に性能の良いレンズを使い、緑と青が分離している像を撮影すると、緑と青が検出できず結果として黒くなる部分ができてしまう恐れがあります。そのため、このベイヤー配列方式のカラーフィルタでは、「ローパスフィルタ」の利用が前提となります。

ローパスフィルタとFoveonセンサ



ローパスフィルタとは、専門用語で言うと、空間周波数低域通過フィルタのことです。具体的には、すこしだけ像をぼかす空間フィルタです。1画素分として入ってきた光をローパスフィルタを通過させることにより、2×2画素分、つまり4画素分にぼかされます。4画素は、ベイヤー配列の緑2赤1青1に相当するため、各色4画素で全色を表現できるわけです。隣接する画素にあたる光も同様にぼかされますので、あとで簡単な計算を行うことで、各画素にあたる全色の光の量を逆算します。この方法を用いることで、1画素に全色の情報を割り当てることができるのです。
しかしながら、問題もあります。ローパスフィルタで像をぼかしてしまうため、解像感がすくなからず低下してしまいます。このローパスフィルタの設計と、画素混色の計算技術が各社腕の見せ所でもあるわけですが、不可逆演算に近いため、完全にもとの像の情報を再現することは困難です。そこで、フィルムと同じ構造を持つ撮像素子も開発されており、一部市販されています。



シグマのカメラに使われている撮像素子Foveon X3は、上図のように、フィルムと似た構造をしています。各層で赤青緑を検出する半導体を使うことにより、ローパスフィルタがなくても、カラー表現が可能な素子です。万能にも思えるこの素子ですが、製造が困難で、かつ、画素数の増加が難しいことが難点です。現在販売されているものは400万画素程度の素子で、計算により1000万画素を超える画像ファイルを出力しています。また、各色の誤検出が原理的に避けれず、また各色に半導体検出器を最適化することが難しいため、解像感は素晴らしいが、色再現はこなれたベイヤー配列に比べ今ひとつといったものになっています。しかしながら、新しい半導体構造の適用や製造方法の改良、デジタル信号処理による色補正・復元技術などで、今後が期待できる素子の一つです。

光飽和とパープルフリンジ

デジタルカメラでよく言われているのが、ダイナミックレンジ・ラティチュードがフィルムに比べ狭いということです。つまり、光強度に対して許容量の幅が小さく、明るいものと暗いものを同時に写すことが難しいということです。ネガカラーフィルムではラティチュードは6絞り分程度、白黒ネガフィルムに至っては8〜10絞り分以上あるといわれますが、デジタルでは3絞り分程度が一般的です。これは、光検出器のダイナミックレンジが大いにかかわってきます。
光検出器は前述の通り、電流を検出する素子です。実際の撮像素子では、電子を画素の中に貯めて後で一度に電流に変換します。その電子を貯めておける電子量のことをfull well capacity(FWC)といいます。この貯めておける電子数を超えてしまうと、電子が溢れ出してしまうため、これ以上光を検出することができなくなり真っ白な絵となっていまいます。



FWCは画素サイズの大きさに大きく依存します。画素サイズが大きいとFWCも大きくなり、逆に画素サイズが小さいとFWCも小さくなります。画素ピッチ4μm程度の検出器ですと、だいたいFWCは8000個程度が一般的です。つまり、ダイナミックレンジでいうと4桁弱(ラティチュード4絞り分弱)、量子ビットでいうと13bit弱程度です。JPEGでは各色8bit(256段階)記録ですので、JPEG出力では問題がありません。一般的なデジタル一眼レフですと、FWCは10000を超えますので、各色最低13bitのダイナミックレンジが確保できます。昨今の12bit RAW記録というのは、このように撮像素子のFWCに依存しているというわけです。画素サイズが大きいデジタル素子では、各色16bit記録も可能になってきています。それでも、ラティチュード5絞り分弱ですので、一昔前のカラーネガフィルムにようやく届くというレベルです。

さて、光が飽和してしまうとどうなるのでしょうか。
簡単にいってしまうと、FWCを超えてあふれた電子が隣接画素に流れ込んでしまう現象が起きてしまいます。例えば、緑の画素が飽和すると、青と赤の画素に電子が流れ込み、結果、赤と青で表現される色・紫色(パープル)が現れることがあります。これをパープルフリンジといっており、デジタルカメラでよく聞く現象です。



常に明るいところでは画素すべてが飽和しているので白くなるだけですが、輝度差(明暗差)の大きいところでは、黒い部分(電子がたまっていない部分)に電子が流れこみます。ベイヤー配列のデジタル撮像素子では原理上緑の画素の数が多いため、通常は、緑の画素から流れるものが多くなり、赤青の混色である紫色が元来黒い部分に浮いてくるわけです。ベイヤー配列のデジタル撮像素子特有の現象で、忌み嫌う方が多い現象です。これを避けるには、画素を飽和させないことが唯一の解決策です。また、これを逆手にとって、色縁取りをつけることも可能なため、デジタル特有の技法の一つに成り得るものでもあります。

今回のまとめ

多層の感色層でカラー表現が可能なカラーフィルム
ベイヤー配列とローパスフィルタによってカラー表現が可能なデジタル撮像素子
輝度差の大きいところで画素飽和が起きるとパープルフリンジが現れる

次回は、コーヒーブレイク。接写・マクロ撮影に便利なアクセサリのお話です。

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Re:サルでもわかって欲しいカメラ原理講座: #04 写真を写す撮像素子?

>>ごんぺいさま
亀レスで申し訳ありません。

まず画素とRGBフィルタについて。R、G、Bそれぞれが1画素に対応しています。例えばベイヤー配列の1000万画素のカメラですと、Rが250万画素、Bが250万画素、Gが500万画素あると思ってください。
カメラの表記にあるのは、この全色画素を足した数字です。

JPEGなどで出てくる絵は1ピクセルにRGBすべての情報が記録されていますが、それはターゲットとする画素の色情報と周囲のRGB情報から「計算された」色です。
それを各画素毎に繰り返すと1000万画素のカメラなら1000万画素のJPEGが出来るわけです。

でもそのままですと、RGBの色で「モワレ・モアレ」が出てきてしまいます。シマシマ模様を撮るとでてくるアレです。1画素は1色にしか対応していないので、モアレが顕著にでてきてしまいます。

そこで、ローパスフィルタで意図的に1画素分の情報を4画素分に「ボカす」ことによって色情報を平均化しています。このローパスフィルタを上手く設計して、デジタル信号処理をしてあげると1画素1画素シャープでかつ色モアレのない絵を作ることも可能になります。

データの保存は1画素毎に保存するRAW形式と、全部の情報を計算して絵として出すJPGなどの方式がありますね。デジタル一眼レフですとRAW形式も扱えるものが多いですが、コンパクトデジカメや携帯カメラだと計算後のJPEGだけ保存する方式が主流だと思います。

こんなところでいかがでしょうか?

かん 2011年07月15日 19時39分46秒 ( 金 )

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